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業を尽くす

 人は
  出会いによって育てられ
  別れによって深められる

去る8月7日、8日の二日間、広島県庄原市の西願寺にお伺いしてきました。

西願寺の現住職・寺川大雅氏は私の大学の先輩であり、その御縁でここ数年は西念寺の報恩講に法話講師としてご出講いただいていますが、今回はそれとは少し趣が変わって、ゼミの同窓会ということでお伺いしました。

前住職の寺川俊昭師は私の大学院時代のゼミの指導教授で、ゼミの卒業生一同で先生のお顔を拝すべく、20数名が大挙して今回ご自坊に参上したという訳です。

昭和57年(1982年)に大学院に進学し、平成3年(1991年)春に米子に帰ってくるまでの足かけ10年もの間、私は先生から懇切にご指導をいただきました。
その膝元を離れてから早や30年近い月日が流れてしまいました。

折しもその二日間は西願寺の「盂蘭盆会・うらぼんえ」(「原爆死没者・戦没者追弔会」を兼ねる)で、7日の午後に一座二席、8日の午前も一座二席、午後には一座一席の法座が組まれており、同窓生の中から5名が一席ずつ法話を担当することになっていました。
一番近くの米子からの参加ということで、私は最終日の午後、最後の一座を担当することとなり、約一時間お話させていただきました。

   
   
   
 
恩師のご自坊で法話をさせていただく。
30年前には想像もできなかった話で、大げさに言えば「今生の誉れ」と言ってもいいような出来事でしたが、その場に立った私からすれば、晴れがましさよりはむしろ寂しさが勝った気分でした。

私が感じたその寂しさとはズバリ、

「ああ、先生もお歳を召してしまわれたなあ」

ということでした。

当然と言えば当然の話です。
一別以来30年近くも経っているのですから。
先生も、そして私も、その分だけ歳を取っているのです。

まして昭和3年(1928年)生まれの先生は今年91歳の御高齢。

「親鸞聖人のお歳(数えの90歳でのご入滅)を越えました」

とはおっしゃるものの、ご持病もあり、肉体的な衰えはいかんともしがたいものがありました。

ただ、そんな体調の中でも先生は、初日(7日)の法座後、参加者20数名全員の近況方向を聞かれ、ご自身の現状と心境について長時間お話になりました。

「目が駄目になってしまって本が読めなくなったのが何より辛い。
……こんなにも辛い思い(老・病)をくぐらねば業を果たしていけないものですかね。」

長年大学の教員を勤めてこられた方ですから、仕事とか趣味とかという言葉ではとても言い足りないほど、読書は先生の人生において必須不可欠な生業(なりわい)であったはずです。

また、先生のおっしゃられた「業を果たす」とは要するに、死ぬ、命を終えるということです。
老いと病いによる不自由さを抱えながら、それでもまだ死ねない。
「生きる」という務めを終えることができない。
この世で果たすべき何かしらの「仕事・役割」がまだ残っている。

学部時代の指導教授であった鍵主良敬先生(仏教学)はそれを端的に、

「『借り』を返し終えないと死ぬこともできん。」

とおっしゃっておられました。

また、あるご門徒さんは、人工透析の治療を始めるに当って、

「後の者に『手本』を見せてやらねばなりませんからな。」

とおっしゃいました。

いずれにしても生身を持って生きる人間の生の厳しさ・哀しさという他はありません。

   
 
   
 


ただ、先生はお話の最後に門下生一同に対して

「どうか皆さん、それぞれの業を尽くして頑張ってください。」

とおっしゃられました。

「それぞれの業を尽くす」とは、それぞれがこの世の、それぞれの生きる場所において、今この時、自分が与えられた「役割・責任」を、自分の個性・長所を生かした自分なりのやり方で、おのれを尽くして精一杯果たしていく、ということではないでしょうか。

先生のこのお言葉を聞いて「さしあたり自分が業を尽くすべき場所はどこか」と考えた時、自分が担当する翌8日の法座こそがそれだと思い当たりました。

若き日に先生によって「基礎」を作っていただいたこの私が、膝元を離れてからの約30年間の「一人歩き」の成果を発揮すべく、精一杯お話しさせていただきましたが、果たしてその「結果」はどうだったのでしょうかね。(笑)

(『西念寺婦人会だより』2019年10月号に掲載)

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